まず、聴力を左右するふたつの数値を説明します。

Hz(ヘルツ):音の高低を表す数値

音は空気の振動によって発生していて、振動の速さ(1秒間に振動する回数)を数値で表したものを周波数[Hz](ヘルツ)といいます。振動がゆっくりな場合は数値が小さく、人間の耳には低い音として聞こえます。反対に、振動が速い場合は数値が大きく、高い音として聞こえます。
トラックなどが通る音は低い音、小鳥のさえずりなどは高い音、歌声ではソプラノが高い音、バスが低い音、などが音の高低となります。

私たち人間が話す言葉では、母音は低~中音域の場合が多く言葉の強さに影響します。中~高音域には子音が分布し言葉の聞き取りに影響しています。母音が同じ言葉、例えば、しろい(白い)とひろい(広い)などのような言葉では、高音部分が難聴の場合では子音が聞きとりにくいため判別に影響をします。

音の高低を表す数値がHz(ヘルツ)ですので覚えておいてください。
なお、人間の耳で聞くことができるのは、一般に20Hz~20,000Hzの音だと言われています。

 

dB(デシベル):音の大きさを表す数値

そして、音の大きさを表すのがdB(デシベル)と呼ばれる数値です。
一般的な生活音で言えば、人のささやき声が20dB程度、小さい声が40dB程度、普通の声が60dB程度、大きい声が80dB程度、電車のガード下の騒音が100dB程度となります。

ここで重要なことをあらためてお伝えします。
難聴で「話が聴こえない」という場合、声が音として聴こえないというより言葉が聴き取れないという場合が多いです。
私自身もそうでして、言葉は音として聴こえても言葉を聴き取れない場合がほとんどです。

では、ふたつめの説明として、聴き取れない音域を補修する役割を説明します。
AさんとBさんの二人がいたとしましょう(イメージとして理解ください)。

Aさんは周波数500Hz~1000Hzの音域が55dBしか聴こえない、Bさんは周波数3500Hz~4000Hzの音域が70dBしか聴こえない、とします。

健康診断での聴力検査における一般的な目安は30dB以下が正常範囲となっていますので、Aさんは500Hz~1000Hzの音域に25dB分(55dB-30dB)の出力を追加し正常範囲の30dBまで聴力を矯正し、Bさんは3500Hz~4000Hzの音域に40dB分(70dB-30dB)の出力を追加し正常範囲の30dBまで聴力を矯正します。

これが音域の調整機能ですが、ここでもう少し詳しく説明します。

補聴器には音域を調整する粒度(細かさ)の違いがあります。
メーカーや商品によって違いますが、ここでは簡単に説明します。
私たちが日常会話で使う音域はだいたい250Hz~4000Hzとなりますので、補聴器では主にこの範囲の不足する音域の出力を調整することになりますが、この粒度(細かさ)がポイントです。

例として、3つの種類の補聴器をあげます。

  1. 音域ごとの調整ができず全音域を同じ出力で調整するもの
  2. 音域を500Hz単位ごとに各音域の出力を調整できるもの
  3. 音域を100Hz単位ごとに各音域の出力を調整できるもの

この3つの特徴は以下となります。

  1. 出力を上げると全ての音域が上がるため騒がしいところでは声の判別が難しくなる
    また、ドアの開閉や食器の音など他の音も大きく響くため長時間の着用がつらくなる
  2. 音域の調整範囲が広いためざっくりとした調整となり言葉の明瞭度が落ちる
    ※調整単位が粗いと本来調整したい部分と一緒に同じ範囲が上下するため
  3. 音域ごとに細かい調整が可能で個々人によって違う音域ごとの難聴を矯正しやすい

私の体験では、この3つは全く別物レベルで聴こえ度合いが違います。
ということで、ここでは音域を調整できる範囲や幅が補聴器により違うことを理解ください。

調整できる音域のヘルツ(Hz)幅はメーカーや商品ごとに違いますので実際にパンフレットで確認することをお勧めします。
なお、上記3つはほぼ価格とも比例しており、価格の高さは1<2<3となります。

価格の説明で記載しました最高水準50万程度の補聴器は、おおむね音域の調整粒度がメーカー内で一番細かいもの、かつ、オプションも装備されていると思っていただいてよいかと思います。


では、周囲の雑音をカットできるオプションについても説明します。
生活の中ではいつくかの音が複数重なり合っています。例えば、道路脇で人と会話するときには車の音、室内ではエアコンの音などがしている中で人の話を聴くことになります。通常聴力だとこれらの複数の音がしても声を聞き分けることが可能ですが、補聴器では、出力を上げた音域の音はすべて同じように音を大きくしてしまいます。

車の走行音は100~1000Hzですので、その音域の出力を上げると車の走行音の騒音も一緒に大きくしてしまうのです。
このため、騒音と認識できる音だけを分類しカットする機能がこのオプションです。オプションにはいくつかの種類があり、モノを落としたりしたときに突然発生する音を和らげる機能などを持つメーカーもあります。

 

少し難しい説明となりましたが、イメージができましたか?
私は5回ほど補聴器を買い替えていますが、補聴器選びは本当に重要です。
補聴器はつけたものの言葉が聴き取れなかったりうるさすぎて頭が痛くなったりして、補聴器が嫌になる方も多いです。
自分にあった補聴器を選べば快適に日常生活ができるようになり、苦痛も減り生活の質があがりますのでしっかりと選んでくださいね。

では、ここでもう一度2つの説明のポイントをまとめます。

  • 「耳かけ型」補聴器にはBluetoothでテレビやスマホを直接聴ける機能がある
  • 補聴器は音域の調整単位が粗い(広い)と言葉を聴き分ける明瞭度が落ちる
  • 補聴器には騒音や突発音などを瞬時に検知し音をカットする機能がある
  • 機能の多さや精密さは概ね補聴器の価格と比例している

 

補聴器を買うときにもっとも重要なこと


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